自転車保険義務化で自転車保険の加入は必要なの?

自転車保険義務化で自転車保険の加入は必要なの?

2015年10月に兵庫県の条例で自転車保険義務化が施行されて以来、全国の自治体でも同様の規制に動く流れが進みつつあります。「義務化」という強い言葉が使われているので「新規に自転車保険に加入しなければいけないのでは?」と思ってしまう方も多いかもしれません。

そこで、この記事では自転車保険義務化の内容と自転車保険以外で条例を充足できる保険について解説します。

自動車保険の義務化のきっかけ

2008年9月に神戸市北区で当時11歳の少年が乗っていた自転車と歩行中の女性が衝突し、女性は頭を強打して意識不明の重体となってその後も意識が回復せず寝たきりの状態に。その後、神戸地方裁判所の2013年7月4日判決により、保護者に対して9,521万円の高額な損害賠償額の支払いが命じられた。

義務化の目的

自動車やバイク(原付含む)では、事故の被害者を守るための最低限の補償として国が「自賠責保険」を義務付けられており、車両の所有者は車検の際にその保険料を支払っています。一方で、スポーツ自転車(ロードバイク)や電動アシスト付き自転車など、人力でありながら従来のシティサイクルと比較してスピードの出る自転車の増加に伴いって事故頻度と被害規模も上がってきていることにより、加害者が損害賠償額を経済的に負担しきれないことと、賠償金が支払われずに被害者が泣き寝入りすることにならないよう保護するために各自治体で義務化が進められています。

条例で義務化している自治体(努力義務を含む)

義務化

仙台市山形県埼玉県
東京都神奈川県長野県
静岡県名古屋市金沢市
滋賀県京都府奈良県
大阪府兵庫県愛媛県
鹿児島県
※2020年5月現在

努力義務

北海道茨城県群馬県
千葉県富山県和歌山県
鳥取県徳島県香川県
高知県福岡県熊本県
※2020年5月現在

「努力義務」とは、遵守するかは当事者本人の任意の協力に任されており、自発的な行為を促すことを目的として、条文には「~に努めること」「~に努めなければならない」などと表現されています。

罰則はあるのか?

罰則はありません

自動車の自賠責保険は、車両登録と2年(新車3年)ごとの車検制度が必須になっているため保険の加入有無をほぼ確実に管理できます。しかしながら、自転車については自動車同様の管理ができないことや、近距離の気軽な移動手段としての役割が損なわれるなどの問題もあり罰則を設けるには至っていません。ただし、義務化された自治体で無保険の場合は、条例違反であることには変わりはないので、公立の学校に自転車通学する場合に認められないなど、地方自治体が管轄する環境下において不利益が想定されます。

なお、自分の居住している自治体で義務化されていなくても、義務化された自治体を通過する場合は条例が適用されるので、ロードバイクで遠出する方や越境して通勤・通学されている方は知識として持っておきましょう。

義務化で求められる補償項目は「個人賠償責任

義務化の目的は自転車事故による被害者保護のため、各条例においてもいずれかの損害保険において「個人賠償責任」に加入していれば要件を満たしていることになります。

『自転車保険』という商品名に注目するあまり、実際には加入する必要のない保険を契約してしまうことのないように気をつけましょう。

「個人賠償責任特約」が付帯できる損害保険

自転車保険以外の保険種目

一般的な損害保険の約款における「個人賠償責任特約」では、契約者・被保険者だけでなく、契約者と居住を共にする家族全員が対象となります。

なお、約款では「日常生活における」という前提が必ず入っていますので、海外旅行中は”非日常”なので別途で海外旅行保険への加入が必要です。

保険種目注意点
火災保険賃貸・持家のどちらの場合も付帯可能
傷害保険学校で加入を勧められる「こども総合保険」で補償が重複する(無駄な保険料を払う)場合があるので、加入されている方は契約内容を要確認
自動車保険車の買い替え時や廃車でなくなっていないか要確認

クレジットカードの付帯保険に入っている場合も

アメリカン・エキスプレスやダイナースカード、銀行系のゴールドカード以上には、自動で付帯されている傷害保険に個人賠償責任特約がついている場合があります。是非ご自身のクレジットカードも確認してみてください。

自転車購入時にTSマーク(自転車向け保険)に入っている場合

自転車を購入時に防犯登録と併せて「TSマーク」(公益財団法人 日本交通管理技術協会の自転車向け保険)に加入され、時間の経過で忘れてしまっている方もいます。

TSマークの個人賠償責任に対する補償額は以下の通りになっています。

種別死亡もしくは重度後遺障害(1~7級)の場合の保険金額
第一種TSマーク(青色)1,000万円
第二種TSマーク(赤色)1億円
※2020年5月現在

前述の神戸地方裁判所の賠償命令が約9,500万円なので、TSマーク(青色)の場合は火災保険や自動車保険などその他の保険で個人賠償責任特約を付帯して、補償額を1億円程度まで厚くしておくと安心です。

まとめ

自転車保険義務化について、そもそもの経緯や自治体の目的を知ることで、無駄な保険料を払わずに済むことがご理解いただけたでしょうか?

世の中のニュースに迷わされず、「個人賠償責任特約」を他の保険で付帯している場合は、自転車保険は『運転中のケガ』や『盗難』『破損』などの本来の目的での加入を検討しましょう。

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