【徹底解説】地震の備えは地震保険だけでは不足する

【徹底解説】地震の備えは地震保険だけでは不足する

南海トラフ地震や都市直下型地震がいつ発生してもおかしくないと、この数十年言われ続けています。阪神淡路大震災、東日本大震災、熊本地震、北海道地震など、被災された方々が苦しんだのは地震そのものの恐怖だけでなく、被災後に待っていた「二重ローン」問題でした。

賃貸物件にお住いの場合はあまりピンとこないかもしれませんが、持ち家の方や賃貸オーナーの場合は、資産である建物が壊れて住宅ローンだけが残ってしまい、新たに家を建築・購入したくても二重ローンになってしまうと生活が立ち行かなくなるという八方塞がりの状態に陥ってしまいます。

この問題を考えるうえできちんと知っておきたいことは、以下の3点です。

  1. 地震保険の補償範囲
  2. 地震保険に入っていれば十分な補償を得られるのか?
  3. 補償が不足するのであれば他の手立てはあるのか?

この記事では、迫りくる巨大地震に対して、保険によって被災後に早期に生活復旧できる方法を徹底解説していきます。

地震保険とは

地震保険は、民間の損害保険会社が個社でリスクを引き受けていると、巨大地震が発生した場合に支払う保険金に耐えきれず破綻してしまう可能性があることから、日本政府が再保険として引き受けて管理・運用が行われています。そのため、保険会社側では地震保険の保険料を決めることはできず、どこの火災保険に加入しても地震保険部分の保険料は同一になります。

地震保険の補償内容

  • 保険金額(補償額)は、火災保険の保険金額の30%~50%で設定(※)
  • 保険金額の上限は、建物:5,000万円/家財:1,000万円
  • 時価額は築古になっても最低1,000万円と評価される
  • 損害の程度を4段階(全損、大半損、小半損、一部損)に分類して支払われる

※地震保険は単独では加入できず、必ず火災保険と併せて契約する必要があります。

さらに、前述した損害の程度の4分類は下表の通りですが、巨大地震で家が壊れたとしても近年のハウスメーカーの品質を考慮すると全壊して満額が支払われる可能性は極めて低いと言えるでしょう。

損害程度支払保険金額
(地震保険の保険金額に対する割合)
建物家財
全損100%
(時価額が限度)
主要構造部(軸組・基礎・屋根・外壁等)の損害額が建物の時価額の50%以上
焼失・流失した部分の床面積が建物の床面積の70%以上
家財全体の時価額の80%以上
大半損60%
(時価額が限度)
主要構造部の損害額が建物の時価額の40%以上~50%未満
焼失・流失した部分の床面積が建物の床面積の50%以上~70%未満
家財全体の時価額の60%以上~80%未満
小半損30%
(時価額が限度)
主要構造部の損害額が建物の時価額の20%以上~40%未満
焼失・流失した部分の床面積が建物の床面積の20%以上~50%未満
家財全体の時価額の30%以上~60%未満
一部損5%
(時価額が限度)
主要構造部の損害額が建物の時価額の3%以上~20%未満
・全損・大半損・小半損に至らない建物が床上浸水または地盤面から45cmを超える浸水
家財全体の時価額の10%以上~30%未満

どれくらい保険金が支払われるのかシミュレーション

巨大地震が発生したと想定して、どれくらいの保険金が支払われるのか、戸建てとマンションでシミュレーションしてみます。

CASE1:新築戸建ての場合

神奈川県で新築の分譲戸建てを購入、建物価額と同じ保険金額2,000万円(50%の地震保険1,000万円)で火災保険に加入。保険料は、2020年8月時点で下表の金額になります。

地震保険の保険期間
(最大5年間まで)
保険料
5年161,000円
1年35,000円
※築年数割引(10%)を適用、保険金額1,000万円の場合(2020年8月時点)

そして、都市直下型地震が発生して被災、損害保険会社によって『小半損』と査定された。その結果、支払われる保険金額は以下のようになります。


(地震保険の保険金額:1,000万円)×(小半損の支払割合:30%)= 【支払保険金額:300万円】


この金額に驚いた方も多いのでは?仮に、大半損の場合でも600万円にしかなりません。なお、大規模な震災が発生して被災した場合、政府の公的支援として世帯に対して最大300万円が支給される公的支援制度もありますが、こちらは早期の復興を援助する目的で当面の生活費として支給されるため全額が支給されることは期待できません。

となると、やはり地震保険の300万円で家を修理する、場合によっては建て替えるという選択を迫られることとなります。建て替えを選択した場合、解体作業費・資材廃棄費用で地震保険の300万円はすべてなくなってしまう可能性があるので完全に二重ローンになることを覚悟しなければなりません。

CASE2:マンションの場合

中古分譲マンションを購入、建物価額と同じ保険金額2,500万円(50%の地震保険1,250万円)で火災保険に加入。保険料は、2020年8月時点で下表の金額になります。

地震保険の保険期間
(最大5年間まで)
保険料
5年129,380円
1年28,130円
※築年数割引(10%)を適用、保険金額1,000万円の場合(2020年8月時点)

また、マンションの場合は、共有部分と専有部分に分かれていますので、自身で加入するものは専有部分に対する補償となります。

所有区分補償対象契約者
共有部分外壁、エントランス、廊下、エレベーター等管理組合
専有部分内装、建材、建具等区分所有者

そして、都市直下型地震に被災し、損害保険会社の査定により『一部損』となった。その結果、支払われる保険金額は以下のようになります。


(地震保険の保険金額:1,250万円)×(小半損の支払割合:5%)= 【支払保険金額:62.5万円】


実際に東日本大震災で被災したマンションの被害状況ですが、2011年の震災後に(社)高層住宅管理業協会が調査した結果(出典:「東日本大震災の被害状況について」)では、東北・関東において被害が「ない」もしくは「軽微」と回答した管理組合が97%を占めました。このことから、オール電化ではない場合は、地震に伴って発生した火災やガス漏れによる爆発が心配ですが、最近建築されたマンションにお住いで地震保険に加入している場合は、見直しを検討してもよいかもしれませんね。

マンションにおける損害査定ポイント

建物の損害については、共有部分の損害割合で判断されます。共有部分が『一部損』と判断された場合、専有部分についても同じく『一部損』と判断され、区分所有者が加入した地震保険も保険金が支払われます。例えば、マンション共有部分に亀裂が入り『一部損』と査定された場合、専有部分に被害が一切なくとも『一部損』と判定されて保険金が支払われます。

なお、共有部分より専有部分の方が被害が大きかった場合は、専有部分ので損害割合で保険金が支払われることになります。

地震保険を見直す

戸建てにお住まいの場合

冒頭でお伝えした通り、地震保険は日本政府が引き受けており、「地震保険に関する法律」により成り立っています。そのため、地震保険単体では、どこの損害保険会社で加入しても保険料や補償範囲に違いはありません。けれども、損害保険各社が地震被害に対する補償を100%にする特約を設けている商品があるのをご存じでしょうか?

メガ損保といわれる東京海上日動、損保ジャパン、三井住友海上火災、あいおいニッセイ同和損保は地震上乗せ補償特約を販売していますが保険代理店経由で書面による契約のため割愛して、ここではネット申込みができる火災保険をご紹介します。

「地震上乗せ補償特約」を付帯できるネット火災保険

保険会社名商品名
ジェイアイ傷害火災保険ダイレクト火災保険「iehoいえほ」
ソニー損害保険新ネット火災保険
※2020年8月現在

地震補償100%にはならないが地震に対するプラスαの保険

SBIリスタ少額短期保険地震補償保険 Resta(リスタ)
※2020年8月現在

Resta(リスタ)については、世帯人数に合わせて300万円~最大900万円までほ金額を選ぶことができます。一方で、『一部損』の場合は保険金が支払われないというデメリットがあります。マンションにお住まいの方ではなく、戸建ての方の上乗せ補償として活用していただくのがベストですね。

でも、どちらを選ぶにしても保険料の負担は増えてしまいますので、火災保険の補償内容で不要なものはないか見直しを行いつつ、保険料と補償が最適なバランスになるようにしましょう。

マンションにお住まいの場合

地震保険は保険料自体が高いこと、直近でも熊本地震をはじめとして全国的に大規模な地震が発生しており2021年1月以降に保険料が引き上げられることが決定していることなどから、思い切って地震保険に加入しないというのも一つの選択肢です。

家財のみ地震保険に加入するテクニック

建物部分は地震保険の高い保険料に対するメリットを探すのが難しいですが、地震によって本棚等が転倒して本棚そのものや食器・家電品などの損害が出ることが想定されるので家財だけ地震保険に加入するということも可能です。

例えば、建物・家財を一つの契約に含めてしまうと両方とも地震保険に加入することになってしまうので、建物と家財を分けて火災保険に加入することで家財の契約にのみ地震保険を付帯することができるようになります。

保険代理店経由の場合は、保険代理店がより高い保険料の方が代理店手数料が懐に入ってくるため建物と家財を分けて契約するということは認めてくれない可能性があります。このような場合は、戸建ての部分でご紹介したジェイアイ傷害火災保険やソニー損保のネット火災保険で手続きする方が手間も省けて不要な補償も気兼ねなくはずせるのでオススメです。

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