液状化と地盤沈下、地震保険でどこまで補償される?

液状化と地盤沈下、地震保険でどこまで補償される?

2011年の東日本大震災では、震源地から遠く離れた首都圏においても液状化現象が発生し、戸建て住宅が傾いたり、マンションも周辺が地盤沈下して建物と土地の間に大きな段差ができてしまうなどの被害が発生しました。そのため、元々の土地が埋め立て地だったり、河川などが近くて地盤の緩い土地に住宅を購入した方は、大規模な地震が発生した場合に液状化現象や地盤沈下による住宅が心配ですよね。今回の記事では、地震による液状化や地盤沈下による被害と地震保険の補償について解説します。

地震保険に加入していないと補償されない

地震による液状化や地盤沈下の被害は、火災保険と同時に加入する地震保険に加入していなければ補償されません。地震保険は、被害状況によって支払われる保険金が4段階に分かれます。

地震保険で支払われる保険金額(建物)
損害の程度建物の傾斜角度最大沈下量支払われる保険金
全損1度超30cm超保険金額の100%
(時価額が限度)
大半損0.8度超~1度以下20cm超~30cm以下保険金額の60%
(時価額の60%限度)
小半損0.5度超~0.8度以下15cm超~20cm以下保険金額の30%
(時価額の30%限度)
一部損0.2度超~0.5度以下10cm超~15cm以下保険金額の5%
(時価額の5%限度)
出典:一般社団法人日本損害保険協会「地震保険損害認定基準」

地震保険は建物の主要構造部である壁・床・柱の被害状況に応じて上記の4段階に分かれていましたが、東日本大震災直後の2011年6月に液状化による損害の認定基準が追加されました。これ以前は、木造住宅の場合、3度以上傾いていないと全損扱いになりませんでしたが、基準を一部緩和して地震保険で補償できる範囲を広げました。

液状化の起こりやすい土地は?

  1. 埋立地
  2. 旧河道・旧池沼(川・沼・池があった場所)
  3. 大河川の沿岸(特に氾濫常襲地)
  4. 砂丘の裾・砂丘間低地
  5. 砂鉄や砂礫を採掘した跡地の埋め戻し地
  6. 沢埋め盛土の造成地
  7. 過去に液状化が起こった土地

①若い(新しい)埋立地

2011年の東日本大震災では、千葉県浦安市をはじめとして、最近の50~60年以内に造成された埋立地で著しい液状化被害が見られました。しかし、埋め立て後かなりの期間が経過した埋立地でも液状化が発生することがあるので安心はできません。http://www.city.urayasu.lg.jp/shisei/profile/profile/1000020.html

今昔マップ

※個別に調べて記載&画像貼り付け

粘土・シルト分の少ない砂は、埋立て後100年以上経過しても、液状化することがあります。

②川・沼・池があった場所

川は、氾濫などがきっかけとなって流れが何度も変わってきています。また、河川改修で蛇行していた川の流れをまっすぐに変える工事が行われたことで、昔の川が沼地として残っていることがあります。川の昔の流路(旧河道)やかつて沼などがあった所は、地下水位が高く、ゆるい河床砂や埋土が存在し、液状化が最も起こりやすい場所です。川の形や池沼の位置に注目して、旧版地形図と現在の地図を見比べてみましょう。

③大河川の沿岸(特に氾濫常襲地)

大河川の沿岸には、川が運んできた土砂が堆積しています。過去に氾濫が頻繁に起きている地域は、土砂の堆積が盛んな地域で、水はけも悪いので注意が必要です。川の蛇行・屈曲部や合流部は、氾濫が多い地域と見て良いでしょう。現在は流路がまっすぐでも、昔は激しく蛇行していた地域もあり、川の流れの形を明治時代の旧版地図で確認してください。

④砂丘の裾・砂丘間低地

砂丘は、風により運搬された砂が堆積して形成された丘状の地形で、日本海沿岸や、太平洋岸では鹿島灘、遠州灘沿岸などに分布しています。砂丘砂は均等粒径の中砂や細砂で、粒径分布から見て液状化しやすい砂です。砂丘の裾や、砂丘と砂丘の間の低地では地下水位が高いため、極めて液状化を起こしやすい場所です。過去の履歴を見ても、複数回の液状化を起こしている所が多くあります。

⑤砂鉄や砂礫を採掘した跡地の埋め戻し

地盤日本は、世界でも有数の砂鉄の産地であり、1960年代頃まで全国各地で砂鉄の採掘が盛んでした。砂鉄の採掘は露天掘りで、深さ5~10m穴を掘り、砂鉄だけ選別した後、砂を埋め戻して締固めもしなかったため、砂鉄採掘跡地の地盤はきわめて緩い状態となっています。2011年の東日本大震災では、千葉県旭市などで砂鉄の採掘跡地の埋戻し地盤が広範囲に液状化して、約750棟の戸建て住宅が液状化被害を受けました。

⑥沢埋め盛土の造成地

液状化が起こらないと思われがちな丘陵地帯の造成地でも、谷埋め盛土部分で液状化が起きます。谷や沢を埋めた部分は、盛り土の厚さが厚く、地下水の流れもあります。東日本大震災でも、近年造成された14箇所の造成地で噴砂が確認されました。最近の造成地は、谷や沢をうめたところでも、「山」とか「丘」が付く響きの良い地名がつけてられていますが、注意が必要です。

⑦過去に液状化が起こった土地

過去に液状化が起こった土地は締め固まり、再度液状化する危険は少ないという話が聞かれますが、実際には再液状化をする可能性は高いと言えます。これは、液状化時に離ればなれになった砂粒が、液状化後に必ずしも隙間なく密に堆積するわけではないことが理由です。2011年の東日本大震災で初めて液状化した地域も、歴史的に大きな地震を経験していないだけで、今度も同等以上の地震があれば、再液状化を起こす可能性は充分にあります。

地名から分かる!地盤が弱い場所

地名には古くからの地形や地質が由来している場合が多くあります。現在は地盤改良等を行って宅地として整備されていても、自然を人間の手で完全に変えることはできません。もともと湿地や谷などの地形だった場所には自然と水が流れ込む原因が潜んでいますので、地名から過去の歴史を推測したり、古地図で調べてみて慎重に土地選びをしましょう。

水を連想させる漢字

例:水、川、田、谷、島

事例:水上、新川、蒲田、越谷、向島

「さんずい」が入る漢字

例:海、河、江、池、沼、沢、洲、潟、潮、浦

事例:晴海、江東区、津田沼、豊洲、八潮、浦安

水辺の構造物

例:堀、堤、橋、港、津

事例:船堀、稲田堤、日本橋、港区、大津、唐津


これらは一例をまとめたものですが、おそらく皆さんの周りでもすぐに連想できる地名がるのではないでしょうか?

元々は湿地帯や水田だった場所を大手不動産会社が開発して、「●●ヶ丘」「●●台」のようにイメージの良い地名に変更されていることもありますので、不動産購入の前に地元の図書館で地域の歴史を調べたり、実際に周辺地域を歩いて確認することをお勧めします。

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