乳酸は疲労物質ではない!?

20世紀に運動部等で激しくトレーニングをしていた人達は分かると思いますが、当時は足が攣ったり、筋肉疲労が出てくると「乳酸がたまった」という言葉を口々に発していました。しかしながら、最近の研究結果において、乳酸が筋肉疲労の原因ではないという事実が判明してきたので、今回は疲労物質とその対処法について記事にまとめました。

そもそも「乳酸」とは?

体内でグルコース(ブドウ糖)が、解糖系、クエン酸回路、電子伝達系の順番で代謝されてATP合成に利用される過程において、解糖系でピルビン酸と乳酸が生成されます。この後に、ピルビン酸はクエン酸回路→電子伝達系で代謝されていき、乳酸は肝臓でグルコースの再合成に利用されて血液循環により各組織に運ばれます。

乳酸は筋肉に蓄積されて疲労の原因であると言われてきたのは、ノーベル賞も受賞したアーノルド・ヒル博士が発表した筋収縮力学のカエルを使った実験において乳酸が筋肉疲労の原因物質として提唱されたことでした。しかし、2001年にデンマークのオーフス大学の生理学者オール・ニールセン博士の研究によって、その原因がカリウムイオン(K+)による酸化にあることが報告され、その後の研究でも同様の報告がされたため、現在では「乳酸=疲労物質」という説はなくなりました。

足が攣る(こむら返り)の予防方法

フルマラソンで長時間走り続けている場合や急なスピードアップをした場合などに足が攣ることってよくありますよね。正確な原因は解明されていないようですが、筋肉内の「電解質(イオン)」が不足してバランスが崩れることで発生するようです。

下表の主な電解質と役割からナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムの4種類が不足した状態になると発生すると考えられます。激しい運動をすると筋肉疲労だけでなく、大量の汗をかくことでこれらの電解質とミネラルが体外に排出された状態になってバランスが崩れます。脱水症状を防ぐための水分補給と同時に、これらの電解質を摂取すると足の攣りを防止できますよ。電解質を手っ取り早く摂取するには、別記事でレシピをご紹介した経口補水液やスポーツドリンクがオススメです。

電解質主な役割
ナトリウムイオン(Na+)身体の水分量および浸透圧の調節、神経の伝達、筋肉の収縮など
カリウムイオン(K+)神経の伝達、筋肉の収縮、心臓の収縮など
カルシウムイオン(Ca2+)神経の伝達、筋肉の収縮、骨や歯をつくる、血液を固めるなど
マグネシウムイオン(Mg2+)筋肉の収縮、骨や歯をつくる、酵素の活性化など
クロールイオン(Cl̠̠-)身体の水分量および浸透圧の調節、胃酸の分泌など
出典:大塚製薬

ストレスによる脳疲労の対処法

疲労には、筋肉疲労などの肉体的なもの以外にも、外部からのストレスによる「脳疲労」もあります。ストレスによって引き起こされる症状等は、解明されていないことが多々ありますが、外部からの刺激によって脳に活性酸素が蓄積されて炎症を起こした状態になり、身体全体に指示を出す役目の「自律神経」がバランスを崩してしまい身体の不調を引き起こしてしまいます。

自律神経は、内臓や血管などの働きをコントロールして体内環境を整えています。この自律神経には、「交感神経」と「副交感神経」があり、それぞれの役割は下記の通りです。

交感神経日中の活動源になる神経系。目を覚まして交感神経が興奮状態になると、心臓が活発に働いて全身に血が巡ることで血圧が上がり、様々な活動が行えるようになります。
副交感神経睡眠中やリラックスしている時に活発に働く神経系。呼吸は深くなり、心臓の動きもゆっくりになります。

自律神経を整える方法

軽い運動をする

急にハードな運動をすると筋肉疲労も蓄積してしまい、運動自体もストレスとなってしまいますので、それぞれの運動習慣や体力に合わせて適度に運動しましょう。運動によって心臓から全身への血流が活発化することにより、自律神経を整える役割を持つ神経伝達物質「セロトニン」も活性化されてストレス解消につながります。

食事に気をつける

カフェインや油分の多い食べ物、体を冷やす食べ物は、体を緊張状態にして交感神経優位(興奮状態)にしてしまいます。日々の食事で五大栄養素(炭水化物、たんぱく質、脂質、ビタミン、無機質)をバランスよく摂取することはもちろんのこと、あたたかい食べ物で体を温める、セロトニンを生成する成分(トリプトファン、ビタミンB6、炭水化物)を多く含む食べ物を積極的に摂るようにしましょう。

ゆっくりと深く呼吸する

呼吸は自律神経によってコントロールされています。空気を吸うと取り込まれた酸素を全身に運ぶために交感神経が優位になり、逆に息を吐くと副交感神経の働きが高まり、これらを意識的に行うことで呼吸のリズムが安定して自律神経のバランスも整います。

まとめ

疲労には運動による「筋肉疲労」とストレス等による「脳疲労」の2種類があることをご紹介しました。トレーニングで走ったりウエイトを行っている場合も、身体に対して過度な負荷をかけ過ぎると筋肉疲労ではなく脳疲労にもなります。

自律神経のバランスが崩れることは、運動においても練習に対するモチベーション低下にもつながるので、しっかりとオンオフを切り替えて意味のある練習ができるように心がけましょう。

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