スピードアップ練習には「ヤッソ800’s」がオススメ!

スピードアップ練習には「ヤッソ800’s」がオススメ!

フルマラソンでサブ3(3時間以内完走)を達成したいという目標を持っているランナーの方はとても多いですよね。最後まで歩かずに完走する持久力は付いてきたけれども、最後に悩むのは”スピード”です。サブ3を達成するには、最低でも1kmあたり平均4分16秒という速いペースで走らなければいけません。

そこでオススメの練習が「ヤッソ800’s」です。

ヤッソ800’sとは?

アメリカ合衆国のランニングマガジン「Runner’s World」のCRO(チーフ・ランニング・オフィサー)であり、非公式ですが「Mayor of Running」として称賛されているバート・ヤッソ(Bart Yasso)さんによって開発された練習メニューです。このヤッソさんの経歴も只物ではありません。1987年に全米バイアスロンロングコース選手権で優勝、アイアンマンやバッドウォーターウルトラマラソン、数々の山岳レースを完走するなど、輝かしい実績を残しています。そして、2007年にはこれらの功績が称えられて「Running USA Hall of Champions」に選出されています。

「ヤッソ800’s」は長距離の練習で良く取り入れられている1,000mのインターバル走に近い練習で、800mを全力で10本走ることでフルマラソンの予想完走タイムを出せるというものです。

ヤッソ800’sの練習メニュー

  • 800m×10本(インターバル走)
  • レストは400mを走ったタイムと同タイムのジョグでつなぐ

バート・ヤッソの理論では、この練習の800mの平均タイムを以下のようにフルマラソンのタイムに置き換えられるという。

フルマラソン
目標タイム
ヤッソ800ペースヤッソ1km換算フルマラソンのペース
2時間45分2分45秒2分49秒3分54秒
3時間00分3分00秒3分45秒4分16秒
3時間15分3分15秒4分4秒4分37秒
3時間30分3分30秒4分23秒4分58秒
3時間45分3分45秒4分41秒5分20秒
4時間00分4分00秒5分00秒5分41秒
4時間15分4分15秒5分19秒6分02秒
4時間30分4分30秒5分38秒6分23秒

ヤッソ800’sのペースを1kmに換算すると、フルマラソンの目標タイムのペースよりも30秒以上速いペースで走っているということになります。普段の練習でLSDやマイペースで長い距離を走るなど、単調な練習メニューをこなしているだけのランナーにとっては、この練習は非常に有効であると思われます。

ただし、この理論は個人差があるので、最低でもサブ4以上を目指すランナーでないと効果は薄いと考えた方がよいでしょう。例えば、フルマラソン5時間を目指す場合は800mを5分ペースで走ることになるので、練習強度に物足りなさを感じるのではないでしょうか。

また、1本あたりの距離を1kmに変更する、リカバリーのための時間を短縮するなど、この練習を応用して自分に適したメニューに組み替えていくことでも効果が上がると思われます。

ヤッソ800’sの練習効果

最大酸素摂取量(VO2MAX)と心肺機能の向上

インターバル走と同じく最大酸素摂取量と心肺機能の向上が期待できます。ただし、ヤッソ800’sでもインターバル走でも言えることですが、余裕で走れるペースを設定してもこの2点の効果は得られないので、目標タイムを高く設定することが大前提です。

最大酸素摂取量(VO2MAX)の計測方法

プロが行うように酸素マスクを装着してトレッドミルを全速力で走るなんてことをしなくても「安静時の脈拍数」と「高強度のトレーニング中の最大脈拍数」を使って次の計算式から算出することができます。

(最大脈拍数)× 15 ÷(安静時の脈拍数)=VO2MAX(ml/kg/分)

例えば、安静時の1分間の脈拍数60回、最大脈拍数180回の場合、「180×15÷60=45ml/kg/分」となります。ちなみに、一般的な成人男性で40ml/kg/分、マラソンのオリンピック選手が80ml/kg/分以上、一流競歩選手は60ml/kg/分以上の数値になっています。タイムと同時にガーミン等のウエアラブルデバイスを使って脈拍数も記録して、練習強度とVO2MAXも記録しておくと日々の練習の改善にもつながるので非常に便利なのでオススメです。

スピード向上とフォームの安定

レースペースよりも速く走るということは、足を回転を速くしたり、歩幅を広げるなど、ゆっくりとしたペースのランニングでは使わない筋力を使うことになります。また、タイムを10本揃えるには、無理なフォームで走っていてはタイムが出せません。筋力を鍛えることと同時に速いスピードのまま楽に走れるフォームを意識して見つけなければならないので、フォームの改善・安定にもつながります。

練習場所の確保

トラックの無料開放日などを利用して練習するのが最適ですが、近くに陸上競技場がない場合や無料開放日がない場合は、公園のランニングコースや車の通りが少ない場所の距離を測って練習場所を確保しましょう。

「キョリ測」で探す

キョリ測ホームページ
画像は「キョリ測」ホームページより抜粋
キョリ測マップ

無料で地図上の距離を測ることができる「キョリ測」を活用すると、自宅周辺でも簡単に800mを計測してヤッソ800’sの練習を行う場所を見つけられるのでとても便利ですよ。

サブ3再挑戦に向けて試してみた

コロナ禍で自宅時間が増え、本格的に練習を再開したので久しぶりにヤッソ800’sに挑戦してみました。今回はサブ3達成が目標なので、ペースは3分で設定。

結果は・・・

本数初回2度目(2週間後)
1本目3分01秒3分00秒
2本目2分59秒3分00秒
3本目2分55秒2分53秒
4本目2分56秒2分55秒
5本目3分01秒2分52秒
6本目2分58秒2分56秒
7本目2分56秒2分55秒
8本目3分00秒2分58秒
9本目2分58秒2分56秒
10本目2分55秒2分55秒

初回では、何とか平均ペースを2分58秒で収めることができました。感覚的に身体がペースを分かっているものの、1本目は時計を途中でチラ見しながら走り、5本目まではストライドを広くすることを意識して走りましたが、徐々に筋力的にきつくなってしまい3分越え。そこで、6本目からは無理に歩幅は広げずにピッチで足の回転を速くすることを意識しだしたら筋疲労を抑えられ、安定したペースで走れるようになりました。10本の中でも試行錯誤して自分のフォームに改善を加え、意識づけができることはこのメニューの良いところと思います。

更に、2週間後に2回目を実施。目標は、2分55秒平均にまとめること。初回と2回目の両方のタイムから最初の2本が遅いので、明らかにアップ不足ですね。3本目以降の平均で目標はクリア、タイムも5~6秒以内の幅に収まっているので心肺機能と筋持久力も向上していると思われます。

初回と2回目の2週間の間に、階段トレーニングと20km超のトレイルランの2つの負荷の高いメニューを組み込んだので、そのトレーニング効果を測定するという用途でも定期的にヤッソ800’sを取り入れる意味があるかもしれません。このページを見てくださった皆さまも是非チャレンジしてみてください。

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